発達障がいについて

 発達障害者支援法において、「発達障がい」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」(発達障害者支援法 第二条)とされています。最近では診断基準(DSM)の改定に伴い、同じ状態であっても「自閉症スペクトラム」「注意欠如多動症」「限局性学習症」等の診断名を用いるようになってきました。

注意欠如多動症限局性学習症自閉症スペクトラム

 発達障がいの方は一見、周囲の方との違いがよくわかりません。しかし生活上の困難さを抱えておられる方も多く、本人のわがままや育て方の問題と誤解されることがあります。しかし、本人の理解の仕方にあわせた支援や環境面の調整を行うことで力を発揮され、学校や社会で活躍されている方も大勢おられます。

 発達障がい者も私達と同じようにそれぞれ性格や性質が違い、個性を持っておられます。同じ診断名をお持ちでも全く違った印象を受けることもありますが、共通するいくつかの特徴があります。またこれらの特徴がその人の生活を著しく低下させていることも診断のポイントになります。

自閉症スペクトラム(自閉スペクトラム症)ASD

 重度の知的障がいをお持ちの方から知的な遅れ、言葉の遅れを全く伴わない方、幅広い状態が含まれます。おもに3つの特徴があります。

  1. 社会性の障害
    人と感情を共有したり応じたりすることが少ない、マイペース、相手が自分をどう見ているか正確に感じ取る力が弱い。(故に周囲に敏感になりあわせようと頑張りすぎる方も多くおられます)※人との関わりが多い、少ないではなく質が違う。

  2. コミュニケーションの障害
    情報の発信や理解が苦手で、コミュニケーションの困難さがある。人の話しを聞いて理解することが苦手なため、相手とのやりとりのかみ合わなさがあり、また視線、表情等のジェスチャーをうまく理解できない、あるいは乏しい場合がある。一見、流暢に話せるようで状況説明をうまく伝えられなかったり理解していなかったりする事もある。

  3. 想像性・こだわり等の障害
    見通しを持って先の事に思いめぐらしたり、変化への対応が苦手である。曖昧さより白黒はっきりした考えや言い方を理解する。ルールに忠実で特定の手順や、やり方のパターンを好む。興味のあることに極端に没頭することもある。

※ これらの3つの特徴に加え強く感覚面の異常(過敏さや鈍感さ)を伴う方も多く、日常の生活音や匂い、様々な感触等が刺激となり生活のしにくさにつながることも多いです。

注意欠如・多動症 AD/HD

 年齢に不相応な不注意・多動衝動性の症状がみられ、12歳以前(DSM-5で7歳から12歳に変更)にそういった症状がみられ生活に支障をきたします。不注意の症状では活動に集中し続けることが難しかったり、ケアレスミスをしたり、失くし物が多かったりすることがみられます。また活動を順序だてて行うことや時間管理や締め切りの苦手さもみられます。多動および衝動性の症状は手足をそわそわと動かしたり着座の難しさ、しゃべりすぎたり待つことの苦手さがみられます。

限局性学習症 SLD(LD)

 知的障がいのない方で「読むこと」「書くこと」「計算すること」の困難さがある障害です。文字を目で読んで文章として音に出すことが難しかったり、似たような文字の区別が難しい場合もあります。また数の大小や数学的な理解が困難な場合もあります。

 ※上記の3つの発達障がいには生活面に及ぼす困難があります。一方でこのような困難さに結びついている特徴が、その方の強味として発揮されている場合もあります。決まりに忠実な方は融通が利かない面もありますが、裏を返せば差別やえこひいきをしない、細かい事に気が付く方は几帳面さを活かしたり、衝動性が業務での行動力やスピーディーさ等プラスに発揮されている場合もあります。発達障がいの方への支援は学校でも職場でもその方の強味を活かすことと、困難さを補い力を発揮できる環境調整がポイントになります。